意識を科学する:ECRI講義レポート2021/04/09–2/2

イシキSmoothy
18 min readJul 4, 2021

みなさん、こんにちは!
イシキスムージーのユウキです!

この記事では、TimeWaverの開発者マーカス・シュミークが立ち上げた「意識」を科学の視点で研究する団体、Existential Conscisousness Reserach Institute(ECRI)が、2021/04/09からスタートしたオンライン講義から得た考察を記録した記事です。この分野に興味がある人、すでに研究している人の一助になればと思います!

ちなみに当記事の完成時点で既に7つの講義が終わっています。レポート間に合ってません。ですので、気長にお付き合いいただけると嬉しいです(笑)

今回は、講義第一回のレポート後半です!意識を科学していく上で、いくつか量子力学の基礎知識が必要になってくるという事なので、マーカスから紹介された最低限知っておく必要のある古典物理学と量子物理学との違いと、量子論の7つのルールをお伝えします。

*考察記録ということもあり所々、原文を意訳しているところもあります。

第一回:意識を解くための量子論の発展の必要性。(Expansions of Quantum physics related to Consciousness)

講師:マーカス・シュミーク(Marcus Schmieke)

古典物理学の世界と量子物理の世界の違い。

まずは、古典物理の世界観と量子物理の世界観の違いを下記の4つのポイントを通してみていきましょう。

現実世界の捉え方

古典物理学

観測対象(Object)と観測者(Subject)の区別は、観測する現実には影響しないと捉え、これらの要素は観測する現実(Reaity)内では区別せず、これらに依存しない1つの絶対的で物質的な現実として世界を捉える。

量子物理学

観測対象(Object)と観測者(Subject)の区別を観測する現実の要素に入れる。

物質の存在の仕方

古典物理学:局在性

全ての物質は時空間の座標軸のどこか1つのポイントに存在し、同時に他の場所に存在しない。

量子力学:非局在性

全ての未観測の物質は、同時に多数の場所に存在する。

因果関係

古典物理学:因果関係がある (Causal)

量子力学:因果関係がない (A-causal)

可換性:式にある数字の順番の重要性

古典物理学:可変的/Commutative(a・b = b・a)

量子力学:非可変的/Non-Commutative ( <a|・|b> ≠ |b>・<a|)

この様に、古典物理的な世界観で生きる私たちにとっては、時空間に依存せず、観測行為がない限り、とある対象が持ち得る全ての状態を同時に持つことができる量子物理的な世界観はとてもイメージしづらいのです。

ではこの様な怪奇な世界に存在するために従う必要のある7つのルールをみていきましょう。

ルールは全部で下記の7つです。

  • ルール1:ハイゼンベルクの不確定性原理
  • ルール2:ハイゼンベルグカット
  • ルール3:シュレディンガーの方程式
  • ルール4:量子の重ね合わせの状態
  • ルール5:観測(量子から物質へ)
  • ルール6:ボルンの規則
  • ルール7:波動関数の収縮

では順番に見ていきましょう。

ルール1:ハイゼンベルクの不確定性原理

ハイゼンベルクの不確定性原理は、1927年ドイツの物理学者ワーナー・ハイゼンベルク(Werner Heisenberg)が提唱した量子論です。

対象の運動量(Momentum : p)と位置(Position/location : x)の情報を同時に入手するこは不可能。これらの情報は量子力学的な世界だと同時に存在する情報ですが、古典物理学の世界へこれらの情報を持っていくと量子状態が崩壊し、どちらかだけの情報になってしまいます。

Illustrated by Hsiao Han Liu

直感的に捉えると、例えば量子のボールを壁に向かって投げるとします。このボールにはペンキが塗ってあり壁に跡を残します。ですがこのボールは量子ボールなので、壁の至る所に同時に当たり跡を残します。では量子ボールの正確な位置情報(x)を入手するにはどうすれば良いのか?ボールを必死に「投げまくる」です。投げれば投げるほど確率的によく当たる壁の局所により濃く跡を残し、正確な位置情報を入手します。ですが一つ問題があります。それは、ボールを投げすぎてボールが持ち得る運動量(p)が無限に存在してしまい、その情報の焦点が絞れず入手できないのです。ですので次は量子ボールを一度だけ投げて、そのボールの正確な運動量(p)の情報を入手するとします。すると今度は位置情報(x)がなくなってしまいました。一度投げるだけでは壁の跡が薄すぎて当たった場所がはっきりしないのです。

これがハイゼンベルクの不確定性原理の直感的な捉え方です。

運動量(Momentum, p)とは:移動する物体の運動の値で、質量(m)と速度(v)の積で求められます。(p=mv)。量子力学では移動する物体は量子で、波動力学的に対象の量子を表すので、運動量も波動力学的に表します。量子システム内の運動量はプランク定数と波長の積(p=hλ)で求められます。

ルール2:ハイゼンベルグカット

ハイゼンベルグカットも、ドイツの物理学者ワーナー・ハイゼンベルク(Werner Heisenberg)からとった名前で、どこまでが量子の世界(波動関数の崩壊前)で、どこからが古典(物理)の世界(波動関数の崩壊後)かを、ハイゼンベルグカットという境界線で表しす概念です。量子の世界は、対象が量子コヒーレントな状態、「波動関数(Ψ)」で表される様に、対象の状態(State)がローカライズしていない世界です。古典の世界は、量子ディコヒーレントな状態で、「波動関数の崩壊」で表される様に対象の状態がローカライズしている世界です。

そしてこれら2つの世界の間を隔てる境界線が「ハイゼンベルグカット」と言い、「観測者/測定機器」が、対象の情報を得たか(観測したか)、得ていないかが、対象がどちらの世界のルールに従うかを決定づけます。ですが、この観測媒体(人や測定機器)が得た情報(量子の世界にいた対象が、境界線を超えて古典の世界に入った対象)を知らない、他の人や測定機器にとっては、その観測媒体が得た情報は量子状態になり、やはり量子の世界のルールに戻ります。すると、古典の世界と量子の世界の境界線がどんどん曖昧になります。

Illustrated by Hsiao Han Liu

例えば、3人の子どもペンギンがコインを宙に投げてキャッチし、裏表どちらかを当てるゲームをしているとします。一人目がコインを投げる人、二人目が当てる人、そして3人目は最初の2人が見えないところで裏か表を当てる人だとします。一人目がコインを投げてキャッチします。この状態では2人目と3人目にとって、裏表の情報は同時に存在し得る量子状態(重ね合わせの状態)です。そして2人目がコインの裏表のどちらかを言い当てて答えを知ります。この瞬間にハイゼンベルグカットである量子状態の崩壊(波動関数の崩壊/量子ディコーヒレンス)が起こり、量子状態だったコインが、古典の世界のコインとして裏表のどちらかに状態をローカライズさせます。これで、コインが量子の世界から古典の世界に入って来たはずなのですが、最初の2人から離れたところにいる3人目の子どもにとって、そのコインはどちらの世界にいるのでしょうか?実は、3人目にとってコインは未だ量子状態(重ね合わせ)なのです。なのでハイゼンベルグカットが示す境界線は局所的(Local dependent)です。

この概念は長年議論の的になっています。何故なら何が「観測した(ハイゼンベルグカット)」を表す要素なのかが正確にわからなく、現状はかなり曖昧な定義なのです。

例えば、「観測した」は測定機器なのか?それともそのデータ(光)をみた目(網膜)なのか?それとも網膜で変換した電気信号を脳へ伝える神経なのか?という様に還元主義的なアプローチだと永遠ループに陥り、最終的には量子スケールにまでミクロになり、ハイゼンベルグカット前の状態の話に戻ってしまう。なので物質主義的/還元主義的なアプローチだとこの議論に終止符は打たれないのでしょう。

ルール3:シュレディンガーの方程式

シュレディンガーの方程式は、物理学者でノーベル物理学賞を受賞したアーウィン・シュレディンガー(Erwin Schrödinger)によって物理学会にもたらされ、量子力学の発展に大いに貢献した方程式です。

シュレディンガーの方程式は、ある量子システムの量子状態(Quantum State)を予測する方程式です。

簡単に方程式を見ていきましょう。

|ψ>:量子状態(Quantum State)を表します。要するに観測対象が持ち得る全ての状態が同時に存在している状態(量子の重ね合わせの状態)

E:量子システムが持つエネルギーの総量を表します。

Ĥ(H-hat):量子世界での運動エネルギー(Kinetic Energy)と位置エネルギー(Potential Energy)の和を表します。

なので、量子システムある量子状態の対象のエネルギーの総量は、量子システム内の運動エネルギーと位置エネルギーの和だという事を表します。

(このレクチャーではこれ以上深くは話していませんでした。。。)

ではこの式で何ができるのか?それは、量子システム内にある量子状態を予測するために使います。なので、この式から対象の状態の確率が求められます。(|Ψ|²)

Illustrated by Hsiao Han Liu

直感的に例えるとすれば、とある部屋にペンギンがいるとします。部屋を見ずにペンギンの位置を予測したいのですが、予測するために部屋の初期設定をいじります。例えば、ベッドが好きなので、部屋にベッドを置いたり、部屋の隅にたなを置いたりして、部屋のポイントごとに出現のバイアスをかけていきます。。。すると局所的に存在する確率が上がります。そしてシュレディンガーの方程式を使って、確率的にペンギンの場所を算出すると、ベッド周辺15%、たなの周辺65%、机のした17%などのように状態の特定ができるわけです。

実際には水素原子の周りにある電子の位置を予測したり、スピンの向きを予測する際に使っているようです。。。

ギリシャ文字のψ(プサイ)は波動関数を表し、観測対象の状態の傾向を教えてくれます。この波動関数を求める式がシュレディンガーの方程式です。ですが、方程式を作ったシュレディンガー自身はψ(波動関数)の実態を知らないようです。

ルール4:量子の重ね合わせの状態

未観測の量子システムにある対象(原子、電子、光子、陽子など。。。)は、可能性のある全ての状態を同時に有し、量子世界における重要な原則の一つ。

シュレディンガーの猫で表現している事がこれです。

Illustrated by Hsiao Han Liu

この性質を使っているのが、量子コンピューターです。

量子コンピュターは2進法がベースですので、表現できるアウトプットは0(|0>)か1(|1>)です。IBMがクラウドで誰でも利用できる量子コンピューターを提供していますので、そのフレームワーク(Qiskit)を参考にしてみましょう。

まず、0と1は[1;0]、[0;1]と表される行列です。

Image by Qiskit

これらを重ね合わせの状態にすると、

Image by Qiskit

|q0>は量子ビットで、右辺に表している様に、量子状態(ψ)です。

この設定で量子コンピュータに演算をさせると、下記の様なアウトプットになります。

0.7071…+ 0.j

0 + 0.7071…j

Image by Qiskit

ルール5:観測(量子から物質へ)

観測という行為は、量子力学にとってとても興味深い要素の一つだそうです。

この行為は波動関数の崩壊(Collapse of wavefunction (Ψ) )とも言われていて、量子情報が古典情報に切り替わる(量子コヒーレントから量子ディコヒーレント)

キッカケになります。

ですが科学界では今でも、波動関数の崩壊がどのタイミングで起こるのかについて議論が続いているそうでして、人の意識的な干渉ではないということを証明しようとしています。

ですが、この取り組みの1番の問題は、人の意識的な干渉がない観測、つまり測定機器を使って量子状態を観測するという行為ですが、この測定機器が観測した情報を知り得ていない人の意識にとっては、測定器が観測していようとなかろうと、量子状態を保つのです。

Illustrated by Hsiao Han Liu

この仕組みをウィグナーの友達という思考実験で説明したものがあります。そして2019年、この思考実験を実際に試した事をまとめた論文も出ており、ここではいかに「観測をしている観測者が、そうでない人たちの世界から事実上独立しているのか?」、シンプルにいうと、違う世界を生きている事を示唆しています。気になる方は読んでみてください。https://arxiv.org/abs/1902.05080

2020年ノーベル物理学賞を受賞したロジャース・ペンローズは意識の研究にも力を入れていて彼の論文(Orch OR theory)では、人の脳の中にある微小官(microtuble)は人の体内温度でも量子状態(量子コヒーレント)を保つ事ができ(日本の研究所で実際に研究したところ可能だったようです。)、人から発せられる重力場が量子コーヒレントに干渉し波動関数の崩壊を促し人間の意識的な活動を可能とすると見ているようです。

彼自身は、複雑なシステムや物事は、それらを構成する部品の最小単位までたどり着くことで、全てを理解し再現できるという視点を持った還元主義的な世界観をもっています。ですので、人間の主観的(精神的)な干渉には懐疑的です。ですがこの論文は彼一人ではなく、スチュワート・ハメロフというメディカル・ドクターとの共著でして、その彼は人の意識(精神)が量子ディコヒーレント(波動関数の崩壊)を促していると考えています。

この論文(Orch OR theory)を詳しく読みたい方のためにリンクを貼っておきます。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1571064513001188

ルール6:ボルンの規則

とある量子システムにある対象が見つかる位置の確率を求める式です。

  • P(a1) :左辺は、時間軸上の特定のポイントにおいて、求めたいある状態の確率を指しています。Pはこれが確率を求めている事を表し、(a)は測定したオブザーバブル(Observable/観測可能量/物理量)Aの測定値であるエルミート演算子Âの固有値 {a1,a2,a3…}(どれも実数値) を表し(a)にくっついてる「小さい1」はどの固有値かを指定している(何回目の観測時の固有値?みたいな感じ。。。)。
  • |<a1|ψs(t)>|²:右辺は、空間内のとある位置で粒子(Particle)が発見される確率は、その粒子の波動関数の大きさの二乗した値と比例する事を表します。

実際には(a1)の部分を(x1,y1,z1)などの様に3つの次元をあてはめることで、三次元空間内においての、とある位置において、粒子を発見できる確率が求められます。

Eg. p(x,y,z)= |ψ (x,y,z,t0)|²

詳しくはこちら:https://en.wikipedia.org/wiki/Born_rule

ルール7:波動関数の収縮

とある量子状態にある対象を測定すると、量子状態が崩壊しオブザーバブルに変わる。

例えば、量子コンピュータの場合、1と0の両方の状態を同時にもつ、量子状態にあるものをQubit(量子ビット、 |ψ>)といい、測定(Measure)すると、古典ビット(Classical Bit)である1か0のどちらかに収束する。

以上、意識物理を学んでいく上で、最低限知っておく必要のある量子論の7つのルールをご紹介しました。

  1. ハイゼンベルクの不確定性原理:時間と位置を同時に正確に知ることはできない。
  2. ハイゼンベルグカット:量子の世界と古典の世界をわける「観測/測定」という境界線
  3. シュレディンガーの方程式:量子状態にある対象の状態(運動、位置、エネルギー量など)の確率を求める方程式
  4. 量子の重ね合わせの状態:量子状態にある対象は可能な全ての状態を同時に有する
  5. 観測(量子から物質へ):観測行為は量子コヒーレント状態(量子状態)の対象を量子ディコヒーレント(オブザーバブル)に変える。
  6. ボーンのルール:空間内のとある位置に粒子が見つかる確率値を求める式
  7. 波動関数の収縮:観測/測定という行為が波動関数を収束させる

今回のレクチャーだけでは物足りない感じがしたのですが、趣旨自体は7つの量子論の概念をまず知っておくことがポイントです。僕も個人的に掘り下げて勉強していきます。皆さんも気になるポイントがありましたら是非各自で掘り下げてみてください!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

ユウキ

イシキSmoothy

【参考文献】

Understanding the Uncertainty Principle with Quantum Fourier Series | Space Time : https://www.youtube.com/watch?v=izqaWyZsEtY&t=576s

How Decoherence Splits The Quantum Multiverse : https://www.youtube.com/watch?v=GlOwJWJWPUs

Information Philosopher — Heisenberg Cut : https://www.informationphilosopher.com/introduction/physics/heisenberg_cut.html

YouTube : Schrodinger Equation Explained — Physics FOR BEGINNERS (can YOU understand this?) : https://www.youtube.com/watch?v=BFTxP03H13k&t=2s

MIT Technology Review : A quantum experiment suggests there’s no such thing as objective reality : https://www.technologyreview.com/2019/03/12/136684/a-quantum-experiment-suggests-theres-no-such-thing-as-objective-reality/

Experimental test of local observer-independence, Massimiliano Proietti : https://arxiv.org/abs/1902.05080

Consciousness in the universe: A review of the ‘Orch OR’ theory, StuartHameroff, RogerPenrose : https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1571064513001188

Born rule : https://en.wikipedia.org/wiki/Born_rule

IBM, Qiskit — Representing Qubit States : https://qiskit.org/textbook/ch-states/representing-qubit-states.html

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イシキSmoothy

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